個別品目ごとの表示ルールについて

By | 2024年3月4日


 2024年1月30日、第3回「令和5年度食品表示懇談会」において、個別品目ごとの表示ルールの見直しについて検討がなされました。その際の資料「【参考資料】個別品目ごとの表示ルール」に、現状の課題を分かりやすく整理したものがありますので、こちらで取り上げてみたいと思います。

概要


別表第3 食品の定義
別表第4 個別の表示ルール(名称、原材料名、添加物、内容量)
別表第5 名称の規制
別表第19 追加的な表示事項(使用上の注意、調理方法、形状、特定の材料の含有率など)
別表第20 表示の様式
別表第22 表示禁止事項

 例えば食品表示基準別表第4「マカロニ類」の規定では、形状や大きさ、太さの違いによって表示できる名称が異なるため、いわゆる「パスタ」については、「マカロニ類」と表示することになります。

表示の違いの例


 同様の製品であっても製品形態によって使用できる「名称」が異なります。例えばフェットチーネでは、乾めんは「マカロニ類」の個別ルールに従い「名称:マカロニ類」と表示します。そして冷凍食品は「調理冷凍食品」 の個別ルールを参考に表示 (名称:フェットチーネ等)し、生パスタについては個別ルールがないため横断ルールにより一般的名称で表示(名称:フェットチーネ等)します。
 また同じ原材料を用いた製品であっても容器包装によって使用できる「名称」が異なります。例えば和風味のミートソースでは、レトルトパウチ包装 (遮光性あり)の場合はレトルトパウチ食品の定義に当てはまるため、レトルトパウチ食品の個別ルールを参考に「名称:ミートソース」と表示。透明パウチ包装 (遮光性なし)の場合はレトルトパウチ食品の定義に当てはまらないため、横断ルールにより一般的名称で表示(名称:和風パスタソース)します。
 さらに同じ原材料を用いた製品であっても、保存温度、流通形態によって「原材料名」の表示方法が異なる場合もあります。例えばぎょうざでは、冷凍の場合は「調理冷凍食品」に該当し、 個別ルールに従い表示(「皮以外の原材料」と「皮」の重量を比較し、重量順に表示)します。チルドの場合「チルドぎょうざ類」に該当し、 個別ルールに従い表示(①食肉、②魚肉、③野菜、④つなぎ、 ⑤皮、⑥その他のものの重量を比較し、重量順に表示)し、上記以外(冷蔵・常温など)は個別ルール「皮以外の原材料」と「皮」の重量がないため横断ルールにより表示します。
 
 これらは旧JAS法で定められたものがそのまま食品表示府令に移行したものであるため、今日的にみて、消費者の合理的な選択という観点からの意義や、事業者への負担などの検討課題が提起されている状況です。同懇談会では、これら個別品目ごとの表示ルールの制定の経緯や背景を踏まえつつ、国際整合性等の観点により全体としては横断的なルールに寄せていく方向で議論が進められていますので、今後の具体的な表示方法については引き続き注目しておきたいと思います。(なお栄養強化目的で使用した添加物の表示についても、原則すべての加工食品に表示する方向が再確認されています。こちらの改正案や時期については、今後の検討会等により明らかになると思われます。)


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

The following two tabs change content below.

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
 アヌーガ・セレクト・ジャパン様主催。
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら