2024年7月、英国の広告基準協議会(以下ASAと示します)は「Environmental claims in food advertising」を公表し、肉、乳製品、植物由来の食品表示を通して「環境主張」を行う際のアドバイスを行っているのでご紹介させて頂きたいと思います。
ASAが最近実施した、肉、乳製品、植物由来の食品の環境主張に関する消費者調査では、広告の文脈で特定の「グリーン」または「ナチュラル」という用語や視覚イメージを使用すると、一連の連想が生まれ、ブランドまたは製品の環境、動物福祉、健康によいことなどについての強い憶測が呼び起こされる可能性があることが示されました。この調査結果を受けてASAは、特定の描写と現実の間に誤解を招くような乖離を生むほど、そのようなストーリーが行き過ぎないように注意する必要があるとしています。
具体的には、写真を使って環境主張を行う場合は、描写する現実世界の環境で撮影または撮影されるべきとしており、これが実現できない場合は、正当な製品のストーリーを超える形で、現実世界での農畜産の慣行および条件の性質(視覚的または言語的)を誇張しないように特に注意する必要があるとしています。例えば、自社の製品において、畜産動物を実際に「放し飼い」していない場合、あたかもそうであるかの様にそのことを示唆しないように注意する必要があるということになります。そして最終的にASAは「環境主張」について、すべての広告と同様に、直接的または暗示的、書面または視覚的を問わず、すべての主張に対して証拠を保持する必要があると結んでいます。
この「環境主張」に関連して、日本でも環境省がガイドライン:「環境表示ガイドライン」を設定しています。本ガイドラインでは、適切な環境表示の条件として、根拠に基づく正確な情報であること、消費者に誤解を与えないものであること、環境表示の内容について検証できること、あいまい又は抽象的でないことの要件を満たす必要があるとしています。
このほか、米国連邦取引委員会によるEnvironmental Claims: Summary of the Green Guides (FTC)、欧州委員会(European Commission(EC))によるProducts – labelling rules and requirements (EC)でも、環境主張についてそれぞれガイドラインや規制を設けています。
またアジアにおける「環境主張」に関する動きの一つとして、韓国では、韓国公正取引委員会(KFTC)が、環境関連の表示および広告の審査に関するガイドラインを改正し、実態がないのに環境に配慮しているように見せる、いわゆる「グリーンウォッシュ」に対する規制を強化する動きがあった様であり、今後も各国の「環境主張」に対する動きは注意して見ておく必要がありそうです。
環境問題への関心がますます高まっていく中で、この「環境主張」という強調表示を積極的に取り入れる動きが加速しそうです。今後各国の関連規制に従って、この様な表示を行う際に、今回の情報をお役に立てて頂ければ幸いです。
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亀山 明一
趣味は外国文化に触れることと旅行。
・2020年10月20日 Regulatory Requirements of Food Ingredients/Additives Used in Japan
ChemLinked(REACH24Hコンサルティンググループ)様主催。
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