米国カリフォルニア州の食品の期限表示に関する標準化法案と期限表示をとりまく食品廃棄問題の現状について

By | 2024年10月31日

 2024年9月28日、米国カリフォルニア州は、食品の期限表示に関する標準化法案に署名がなされたことを公表しました。同州ではこれまで期限表示をする場合には、「BEST if Used By」、「Use By」等の推奨する表示方法だけでなく「Sell by」「Best by/before」「Expired by」などの表示も認められていましたが、2026年7月1日から「BEST if Used By」、「Use By」等の標準化された表示が義務付けられます。これまでの多様な期限表示は消費者にとって紛らわしく、不要な食品廃棄につながっているとする課題があったところ、標準化された表示により品質や安全性を混同する可能性を減らすことで、持続可能な未来に役立つとされています。

 なお米国では乳児用調製粉乳を除き、食品の期限表示に関する連邦規制はありません。2023年5月にFood Date Labeling Act(食品期限表示法)の法案提出がなされており、こちらも“BEST If Used By”、“USE By”等への標準化を図ることで消費者の混乱を防ぎ、食品廃棄問題の解決につながることを目指しています。

 期限表示と食品廃棄問題の関係性については各国でも課題としてとりあげられています。EUでは食品廃棄の最大10%が期限表示に対する理解不足に関連している可能性があると推定しており、 消費者への食品情報の提供に関する規則(FIC規則 (EU) 1169/2011)の改正が予定されています。“use by” や“best before”の表示方法について消費者が誤解をすることのないよう、用語、形式、視覚的表現の点での改善が検討されています。

 オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)は2024年4月に「2023 CONSUMER INSIGHTS(2023年消費者調査)」を公表し、「ほとんどの人がbest before(賞味期限)とuse-by(消費期限)を正しく理解しているが、最大3分の1が誤った理解をしている」「期限表示を正しく理解している人のうち、最大3分の1が自分の理解と一致しない行動をとる」として、賞味期限を過ぎた食品を廃棄している現状に触れています。

 日本でも2024年5月より「食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会」が開催され、期限表示設定の見直しのほか、“賞味期限が到来した食品で「まだ食べることができる食品」の取扱”についても検討がなされています。改正ガイドラインは、2025年3月に公表される予定です。

 以上、簡単に現状をまとめてみました。実務上は、特に米国向けに食品を輸出する際には「賞味期限の表示方法を見直す必要がある」ことになりますが、その背景として期限表示は食品廃棄の問題と関連していることへの理解を深めることで、今後の対応や準備がしやすくなるのではと思います。

 <補足>
 製造時に印字されることの多い期限表示は、輸出入時において「表示順(日本は「年月日」ですが、「日月年」や「月日年」とする国もあります)」の間違いが起こりやすい表示事項といえます。表示のデザイン段階でも賞味期限表示スペースを空欄とせず、「YYYY.MM.DD」「DD.MM.YYYY」「MM.DD.YYYY」等と予め入れておくなど、事前に気づきやすくするとよいと思います。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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