日本のイスラム”ハラル”市場参入について

By | 2018年3月7日
チュニジア人のIkram(イクラム)さんのインターン終了時のレポートのあいさつ文です。
ハラルに関する情報などがお役にたてればと思い、こちらに掲載させていただきます。

 2ヶ月間の株式会社ラベルバンクでのインターシップの終わりが近づきつつある今、最終レポートの準備をしていると、どれだけ私の知識が広がったのかを実感することができます。北アフリカ出身の私からみると、地域間とチュニジア・日本の2国間の国における文化の違いもあり、日本の食における市場は驚くべきものでした。食物のカテゴリーと目的は、一般的に慣例的に日本人消費者向けになっています。当然、海外向けの食品は目的国によって変えられるべきであり、現地の安全基準や法令によって決められるべきです。日本の規制システムは他国とは違い、とても詳細に決められているため、複雑になっています。

 ラベルの規制、品質監査、取引などを所管する消費者庁は、消費者の権利の保護、強化のために発足しました。食品の定義そのものやカテゴリー分けから、日本と他の国々の基準や規制は違っています。また、厚生労働省は食品を大きく2種類に分類しています。栄養機能食品もしくは特定保健用食品のような健康を強調した保健機能食品と、主に妊婦、乳幼児、高齢者向けの特別用途食品です。ラベルは、食品表示法に従ってエネルギーと栄養素を誤解のないよう表示する必要があります。

 強調表示は国によってさまざまです。例えば、ある国では疾病リスクを抑えるという表示を禁止しています。製造者は、貿易のプロセスで強調表示の指定に戸惑いを覚えることもあるかもしれません。しかし、少子高齢化という日本の抱える問題を考えると、将来、国内の消費が減少することが考えられます。日本政府はそのため、より海外へ大きな市場を求めて動き出しています。ヨーロッパにおいては、美食家の関心を集めるなど、日本の製品は海外市場で取り上げられ、日本の文化は多くの若者を魅了し、それによって日本が旅行先に選ばれるようになっています。

 日本の地理から考えると、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、南フィリピン、タイ、ミャンマーなどが大きな市場と考えられるでしょう。また、世界のイスラム教徒の62%はアジア太平洋地域在住ということも鑑み、近い将来、中国と競うことになるであろうポテンシャルのある市場についての話をしたいと思います。

 現在、イスラムの市場に参入するには厳格で厳しい“ハラル認証” を受ける必要があります。このプロセスは、日本にとって新しいものなので、ハラル認証を受けられるにもかかわらず、認証を受けずに表示をしていない製品が見られます。これは日本のイスラムコミュニティを無視しているわけではなく、文化や慣例の問題です。日本製品が、今後ゆっくり注意深くハラル市場へ参入するようになると、ハラル市場で世界的にもっとも信頼されているJAKIMという認証機関によるシステムによって今後、ハラル認証は認知されていくことでしょう。2017年からJAKIMは日本の6つの組織をハラル認証の発行機関として指定しました。この仕組みにより、日本企業は海外のイスラム市場へ参入し、製品を輸出しています。また、この重要なプロセスにより、どの日本企業も相手国を理解し、ニーズを知ることでイスラム市場へ参入することができます。例えば、ある国の企業、正確には製品開発チームは、ニーズや伝統的な特色、風味、食習慣、購買力、目的国の中間階層の労働者の能力に注目すべきです。そうすれば、認証を受けた日本製品が現地の状況に適合し、現地生産の製品と競合できるようになるでしょう。

 ハラル認証を受けるのは簡単ではありませんが、不可能ではありません。認証要件は、シンプルで理論的であるといえますが、業界にとっては、ハラルへ切り替えるプロセスはかなり難しいものです。だからといって、ハラルでない食品(豚肉、イスラムの方法でない屠殺による動物の肉、血、死骸など、もしくはゼラチンなどこれらに由来する食品)を使用してはなりません。製品そのものだけでなく、相互汚染などによる残留物の混入も認められません。安全性と品質管理の研究による分析法や洗浄プロセスを活用すると、効率的にハラル認定を受けることができます。

 今日の私たちの使命は、顧客の手助けになるよう、将来起こりうる問題や予期せぬ事態をバックアップするようなプランや解決法を見つけることだと思います。一度目的が達成されると、常に状況を追跡でき、革新的なアイディアを提案し、顧客がさらにビジネスを拡大する手伝いが可能になります。

 お会いした食品会社のみなさん、そしてラベルバンクのみなさん、貴重なお時間を割いていただき、いろいろ教えていただいたことで、今日インターンとしていろいろなことを学ぶことができました。とても感謝しています。


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【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
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・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
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・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
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