栄養表示制度の対象となる食品と事業者について

By | 2014年3月3日

栄養表示制度の対象となる食品と事業者について


栄養表示が今後義務化されることについては以前にも取り上げておりましたが、1月22日に行われた消費者委員会で栄養表示に関する調査会が開催されておりますので、その内容を紹介できればと思います。

対象となる食品の指標となる3つの軸


栄養表示の義務化の目的としては、消費者の適切な食生活を行うための商品選択をする際の情報源としているため、まずは消費者が求めている情報であるかが対象食品を決める際の視点の一つとなります。また事業者の実行が可能かどうか、私達の食生活を取り巻く環境を考慮して、
?消費者における表示の必要性
?事業者における表示の実行可能性
?国際整合性
の3点を主な観点として表示義務を免除する食品を決めていくことになりそうです。

4つの区分

具体的には?と?の2軸で(包装された)食品を4つの区分に分け、それぞれの栄養表示の必要性を?の視点も加えながら、表示義務免除となる食品を決めることになります。?の視点については、ただ海外の事例に倣うのではなく、日本の食文化の中で栄養表示を免除すべきか否か議論・整理した上で、その視点が国際的に共通しているかを計るための視点と思われます。

また、輸入食品についても消費者の栄養表示の必要性が高いものしており、また諸外国での例をみても表示義務を免除している例はないとして、国内製造品と同様に栄養表示を義務化する方向で進められています。

食品表示制度の対象となる事業者について


栄養表示の義務化が決められた際に、原則的に食品関連事業者が食品を販売する場合はすべての事業者が表示義務の対象となりますが、家族経営のような零細な事業者のように適用が困難な場合など一部例外を設けるとしておりました。

この「零細な事業者」をどのように定義するかについて、調査会での案では、中小企業基本法に定める「小規模企業者」の定義(概ね常時使用する従業員数が20人(商業、サービス業は5人)以下の事業者)についてはリサイクルマークの表示義務から除外されていることを参考に正社員および正社員に準じた労働形態である従業員数5人以下の事業者については栄養表示義務を免除してはどうかと提案がされています。

ですが、この人数の線引きについては適正なものであるかまだまだ議論の余地があるとして保留されています。また、海外の事例では年間での販売数が少ない事業者に表示義務を免除している例があるため、一部の輸入食品が栄養表示に対応できない可能性があるとして販売数による免除規定を設けるべきという声も挙がっています。

食品表示制度の対象となる事業者について


こちらについては、これまでの制度と大きく変わるものではありませんが、表示義務から免除された食品や事業者の場合でも自主的に栄養成分を記載する場合や「Ca配合」や「ビタミンたっぷり」といった強調表示を行う場合は、表示義務がかかる食品と同じ方法によって表示されるべきであると提案がされています。

例えば、お酒などは調査会では栄養を得る目的ではない嗜好品のため、消費者にとっての表示の必要性は低いとして「区分B」とされていましたが、その中の議論で現在販売されている商品には自主的に栄養表示基準に沿った表示がなされており、また「糖質ゼロ」や「カロリーカット」といった表示がされているものがあり、その場合には強調表示にあたり免除の対象にすべきではないといった話から、訴求したい情報を前面に推し、事業者にとって望ましくない情報が外されるといった事はあるべきではないとして、現行の栄養表示基準と同様に自主的な表示であっても規定された表示方法で記載されるべきという風にまとめられています。

フラットな形で情報提供がなされるということは、消費者の商品選択のために必要なことであり、またその中から新たな商品が生まれることもあるため意味のあることであり、そのレギュレーションを行う今回の調査会は非常に大きな意味を持つと思っています。消費者、事業者どちらか一方の立場に立たず公平な制度となることを祈るばかりです。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
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・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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