栄養成分表示者について~食品表示基準Q&A 第6次改正より~

By | 2019年4月4日

 2019年3月1日に食品表示基準Q&Aの第6次改正がありました。今回は新しい表示例として、「栄養成分表示者」の追加がありましたので、こちらにとりあげてみたいと思います。

追加されたQ&A本文


 まずは追加されたQ&Aの内容を確認してみましょう。

(加工-172)小規模の事業者(注)が消費者に販売する食品は、栄養表示をしようとする場合を除き、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することができますが、小規模の事業者が製造し、小規模でない事業者が販売する場合も、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することができますか。

(注)小規模の事業者とは以下のいずれかに該当する者です。

  • 消費税法(昭和63年法律第108号)第9条第1項において消費税を納める義務が免除される事業者
  • 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項に規定する小規模企業者

(答)
小規模の事業者が製造した食品を小規模でない事業者が販売する場合は、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することはできません。この場合、製造者(小規模の事業者)が必ず栄養成分の量及び熱量の表示を行う必要はなく、販売する者(小規模でない事業者)が表示しても差し支えありません。

(加工-173)小規模の事業者が製造し、小規模でない事業者が販売する際、小規模でない事業者が栄養成分の量及び熱量の表示を追記した場合、栄養成分の量及び熱量の表示を追記した者の氏名又は名称及び住所を表示する必要がありますか。

(答)
小規模でない事業者が栄養成分の量及び熱量の表示を追記した場合、追記した者が追記した表示内容(栄養成分の量及び熱量の表示)の責任を負うことになります。この場合、追記した者の氏名又は名称及び住所を別記様式2又は別記様式3の表示に近接した箇所に表示することが望ましいです。

【表示例】

栄養成分表示

食品単位当たり

熱量
たんぱく質
脂質
炭水化物
食塩相当量

kcal
g
g
g
g

栄養成分表示者:○○○○株式会社
東京都千代田区霞が関○-○-○

食品表示基準において栄養成分表示が省略できる場合


 ここでおさらいですが、食品表示基準においては以下の場合に栄養成分表示を省略することが可能となっています。
(出典:食品表示基準 第3条3項)

以下に掲げるもの(栄養表示(栄養成分若しくは熱量に関する表示及び栄養成分の総称、その構成成分、前駆体その他これらを示唆する表現が含まれる表示をいう。以下同じ。)をしようとする場合、特定保健用食品及び機能性表示食品を除く。)

  1. 容器包装の表示可能面積がおおむね三十平方センチメートル以下であるもの
  2. 酒類
  3. 栄養の供給源としての寄与の程度が小さいもの※
  4. 極めて短い期間で原材料(その配合割合を含む。)が変更されるもの
  5. 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第九条第一項において消費税を納める義務が免除される事業者が販売するもの

※熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウムの全てについて、0と表示することができる基準を満たしている場合、または、1日に摂取する当該食品由来の栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム)の量及び熱量が、社会通念上微量である場合(コーヒー豆やその抽出物、ハーブやその抽出物、茶葉やその抽出物、スパイス等)(「食品表示基準について」、「食品表示基準Q&A」より)

 追加されたQ&A内でいう「小規模の事業者」とは、上記の5(消費税法第九条第一項において消費税を納める義務が免除される事業者が販売するもの)を指しています。「~の事業者が販売するもの」であり、製造するものではない、という点でQ&Aによる補足が必要になったものと思われます。

小規模事業者と栄養成分表示


 製造者に代わって、販売者が栄養成分表示を作成する、というケースを想定してのQ&A追加ということになります。実態としては、各地域にある地場農水産加工品の販売所への納入時などを想定しているものと思われます。そして2015年4月に施行され、栄養成分表示義務化への経過措置期間である2020年3月末まであと1年という時期に食品表示基準Q&Aに追加されたということは、それだけ多くの小規模事業者が栄養成分表示の新規作成を困難と感じているものと思われます。

 このQ&A追加により、小規模事業者が販売者より栄養成分表示を求められた場合は、販売者に栄養成分表示を作成してもらうことが容易になるでしょう(もちろん、取引の関係によります)。そして、地場の農水産加工品の品ぞろえを増やしたい販売者にとっては、小規模事業者である製造者に代わって栄養成分表示作成をしなければならないケースが増えることも考えられます。

 なお、食品表示基準Q&A第6次改正では、その他にもいくつか改正点(栄養成分表示における食品単位当たりの表示について、「1個の重量にばらつきがありますが、表示値は△gの場合の値です。」「1個の重量は、〇~〇gです。」といった枠外への補足事項の表示を可能とするもの等)があります。
 食品表示基準Q&Aはたびたび改正されており、2018年9月の第5次改正時には「香料や着色料といった五感に訴えるような添加物は、調味料や甘味料同様にキャリーオーバーとみなされず表示が必要」の追加がされたなどの改正がありますので、この機会に、過去の改正情報についてもあわせて確認されてみるとよいと思います。


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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2025年1月28日 加工食品の各国の表示作成実務における留意点について
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・2025年1月23日 日本の食品表示制度の改正状況~まとめと今後について
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・2024年4月11日 “低糖質、〇〇不使用、植物由来、機能性等” 健康に関する食品の輸入および輸出時の表示確認の実務について
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