海外食品基準情報~米国の代替肉関連基準、栄養成分および期限表示について~

By | 2020年10月9日


 本コラムは、2020年5月に掲載した「COVID-19感染症拡大下の食品表示法令に関する各国の対策についての最新情報」の続編です。執筆者は前回同様、当社の調査第2チーム所属のイクラムが担当しました。今年起きている日本の生活での変化の体験をもとに、海外に目を向けた情報発信の機会としています。今年日本では・・・

  • 栄養成分表示が義務化され、多くの食品で確認できるようになりました
  • 環境保全のため、コンビニ等のレジ袋が一斉に有料化されました
  • 食品ロス低減のため、賞味期限の年月表示化された食品が増えました
  • 代替肉等の新素材食品が増え、大豆ミートのJAS規格化の検討が始まりました

 これらの変化を踏まえ、海外の動向に目を向けていただく機会になればと思い、本稿を掲載させていただきます。


 新型コロナウィルス感染状況について、現地政府の対策や各国国民の意識により、増加している国もあれば減少している国もあります。しかしながら、国際的に経済のバランスに影響を及ぼしている点において結果は似通っています。日本も例外なく、この長期にわたる地球規模の難局に直面していますが、国民はそれぞれ日常において国を支えようと努力しています。私たちは、2020年の終わりが見えてきた今、食品業界や消費者の安全面で次に取るべき規制面での手段や対策についてその行方に注視しています。

食品の新技術と法整備


 国際的な食品貿易は停滞している一方で、科学者は植物由来の代替肉に加え、細胞培養肉のような新しい代替食品の開発を続けており、新しい技術が食卓に持ち込まれることになるでしょう。FDA(米国食品医薬品庁)は消費者の安全の確保を目的とし、それら製品の安全性やトレーサビリティを確実にするため、このような技術に関心のある食品業者と連携をはかっています。

 FDAとUSDA-FSIS(米国農務省食品安全検査局)は、このような革新的な技術の見識へのより良い理解を求めるためパブリックオピニオンを設置しており、製品の発売に向けて準備を進めています。2019年に公式協定を発表し、それに基づき両機関は不当表示から消費者を守り、その安全確保のため、特に動物の細胞培養肉由来の食品に関して規制の枠組みを設置することになります。

 従来の動物の肉を使用した製品の代替品としては、培養肉の他、植物由来の代替肉もあり、市場でも注目されています。

 昨年11月に当ブログで掲載しましたFDAによる通知に基づく記事でも触れましたが、植物肉を使用したハンバーガー等に使用されるひき肉代替品に使われる着色料として、大豆レグヘモグロビンは未調理状態の製品重量の0.8%を超えてはならないことになっています。大豆レグヘモグロビンが色素添加物証明書免除リストに追加されることでその安全性が結論づけられ、このような決定に至りました。

 大豆ミートのような植物由来の代替肉の世界的な市場の拡大をうけ、日本でも食肉代替品への認知度を拡大するため、そして日本製品の競争力を高めることを目的として、JAS規格化の検討が始まっています。

 植物由来の製品への人気は肉に限らず、植物性ミルクも消費者の関心を集めています。特にオーツミルクは豆乳と売り場で人気を競い始めています。しかし、FDAが「milk」を定義する最重要点である「乳を分泌する」という過程、「牛乳とは、1頭以上の健康な牛の完全搾乳によって得られる、初乳を実質的に含まない乳汁分泌物を意味する…(CFR(米国連邦規則集)21. §131.110 (a))」には当てはまらないので、植物由来の代替ミルクに「milk」という言葉を使用することは適法なのかという議論があります。

新しい栄養成分表示について


 FDAは栄養成分表示の規則改正に関する関心を高めようと過去数か月にわたり革新的な情報キャンペーンも行っています。この運動によって消費者に栄養成分表示を見る習慣をつけてもらい、食生活に何が最適かを考えてもらおうというものです。以下の4つが主な改訂点です。

  • 1食当たりの量:以前より大きく太字で表記。また1食当たりの量が変更されたものもあり。
  • カロリー:以前より大きく太字表記に
  • 1 日栄養所要割合 (%DV):更新あり。ラベル下部の脚注を含み、1 日栄養所要割合 (%DV)と低い、高いの概念を消費者によりわかりやすく説明する。
  • 栄養素:
    <削除>:脂肪のカロリー、ビタミンAとC(任意表示の対象)表示
    <追加>:添加糖類、ビタミンDとカリウム
    <変更なし>:カルシウムと鉄分

 日本、米国、その他の国々の表示規制の変更や更新が行われていますが、地球規模の新型コロナウィルス問題が起こっていない場合の通常の更新スピードを考えると規模が小さいといえるでしょう。その間にも技術革新により数々の新しい食品が市場に進出し、新しい食品を目のあたりにすることになるでしょう。

期限表示について


 この記事では期限表示の概念で締めくくりたいと思います。このような表示情報の目的である消費者の健康と安全を守るということは共通です。表示上のその情報の選定は国によって異なります。例えば、日本では「賞味期限」、「消費期限」と呼ばれ、表記方法は「yyyy.mm.dd」となっています。しかし、米国では「Use before」、「Sell by」、「Expires on」などいろいろな表記があり、消費者に混乱をもたらすこともあります。このような理由でFDAは食品業界に「Best if Used By」という表示をするよう数年前から推奨しています。

 最後になりますが、世界的に見ても各国の政府、組織は消費者の安全を最優先にし、できる限り透明性を保ちながら食品表示規則を更新していく努力を続けています。
記事を読んでくださり、ありがとうございます。今後も食品に関する規則についての情報を提供してまいります。


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イクラム

海外調査担当株式会社ラベルバンク
チュニジア出身。生物学を専門とし、海外の原材料、添加物、表示基準の調査業務に従事しています。また海外のお客様とのコミュニケーションを円滑にするサポート業務にも取り組んでいます。
趣味は料理。

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」

【最近の講演・セミナー実績】
・2024年9月3日「日本の食品・飲料市場について: 食品基準、添加物、表示基準」Kansai Food & Beverage Forum 2024:CCI France Japon様主催。
・2024年4月12日「日本の菓子市場について:食品基準、添加物、表示基準」 ISM Japan 国際菓子専門見本市様主催。

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