各国のアレルゲン表示に関する基準の改正動向について

By | 2024年10月4日


 2024年3月28日に食品表示基準が改正され、アレルゲン表示推奨品目にマカダミアナッツが追加(まつたけは削除)されてから半年が経過しました。表示義務8品目、推奨20品目の計28品目の数は変わらないため、容器包装だけを見る限りは変化が分かりにくいですが、徐々に対応が進んでいる状況かと思います。そこで今回は広く海外まで目を向け、今年に発表されたアレルゲン表示に関する改正情報についていくつかとりあげてみたいと思います。

 2024年2月、オーストラリア農林水産省(DAFF)およびニュージーランド第一次産業省(MPI)は、新しいアレルゲン表示要件(DAFF通知MPI通知)が発効されたことを発表しました。アレルゲンを太字で表示する、「〇〇を含む」と表示する、などの変更があります。経過措置期間は2026年2月25日までです。

 2024年7月、タイ保健省食品医薬品局(FDA)は「包装済み食品の表示(第450号)」(原文(タイ語))を公布、施行しました。英語版もあわせて公表されています。アレルゲン表示対象品目として、「貝類、軟体動物およびその製品」が追加されました。経過措置期間は2026年7月19日までです。

 2024年8月、サウジアラビア食品医薬品局(SFDA)は、包装済み食品におけるアレルゲン表示基準の草案を公表しました。アレルゲン表示対象品目の一覧のほか、太字、下線、色により強調する表示方法や、文字を添えたイラストによる表示方法も示されています。

 2024年9月、英国食品基準庁(FSA)は、予防的アレルゲン表示(Precautionary Allergen Labelling:PAL)に関する取り組みの最新情報を発表しました。英国のPALの動向については以前(2023年11月)にも取り上げましたが、最新情報ではアレルゲン閾値(誘発用量による基準化)の使用に関する提案が発表されています。

 また2024 年末までに、米国FDA は「連邦食品・医薬品・化粧品法の食品アレルゲン表示要件を含む、食品アレルゲンに関するQ&A」と題する業界向けガイダンス草案を公開する予定とされています。

 以上、簡単に各国の事例について紹介しましたが、タイの事例は包括的な表示基準改正である点に注意が必要です。包括的な表示基準改正の例としては、マレーシアの「食品(改正)(No.4)規則2020年」(2024年1月)、トルコの「消費者情報と食品表示に関する食品コーデックス規則改正」(2024年4月)などをあげることができます。

 そして現在、コーデックス食品表示部会においてもアレルゲン表示について検討がなされており、2024年8月に「アレルゲン表示に関する規定」と「予防的アレルゲン表示(PAL)の使用に関するガイドライン」について意見募集が開始されています。とりわけ予防的アレルゲン表示(PAL)については誘発用量に基づき基準化された参照用量(mg/kg)が品目別(例:アーモンド1.0、落花生2.0、ヘーゼルナッツ3.0、小麦5.0、そば10、甲殻類200)に設定されており、閾値が明確化された改正案となっている点は注視が必要な動向と思います。

 消費者行動の変化と技術進歩に伴い、今後もアレルゲン表示制度は変わっていくものと思われます。海外へ食品の輸出を検討されているなど今後の動向について関心のある方は、一度確認しておかれるとよいでしょう。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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